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高圧,あるいは低圧ミキシングの違い?

Q:高圧ミキシングと低圧ミキシングは,どちらが良いのですか?

JWD:この質問には,多くの異なる解答があります。ここではその内のいくつかを示しますが,その前にまず,高圧と低圧ミキシングの意味を理解しているかを確認しておきましょう。

図1は,高圧ミキシング・システムの概略図です。このようなシステムの場合,一般的に溶媒は2つに限定されていて,その1つずつが,別個のポンプによって高圧側にあるミキサーに送りこまれます。混合物の移動相は,2つのポンプの相対的な流量によって制御されます。この流量は,両方のポンプの流量の組み合わせによって決定されます。

図2は,低圧ミキシング・システムを図解しています。低圧システムの多くは,4種類までの溶媒のあらゆる組み合わせを運ぶことができます(図2ではわかりやすいように,2種類のみを図示しています)。ミキシングはポンプの低圧側で行なわれて,単一のポンプが一定の流量で稼働します。

アイソクラチック(一定流量型)あるいはグラディエント(勾配流量型)HPLCメソッドのルーチン使用という見地からは,高圧ミキシング,低圧ミキシングのどちらでも満足できる結果が得られます。何が得られるのか,あるいは何がお気に入りなのか,ということの方がもっと問題なのです。日常的に使うことにおいては,実は“より良い”システムというものはありません。

 

図1

HPLC 2-1図 2 

HPLC 2-2  

メソッドを作る作業については,低圧ミキシング・システムがまさっている場合があるでしょう。一般的に低圧システムは,4種類の溶媒のどのような組み合わせでも用いることができるように設定されています。つまり,2つの異なるpH バッファー(緩衝剤),それに加えてメタノール(MeOH)とアセトニトリル(ACN)を4個のリザーバーに入れられるということです。これで,MeOHかACNの2つの異なるpH値(4つの可能性有り)か,MeOHとACNのあらゆる混合物(無限の可能性有り)の味見実験的に勾配をプログラムできるようになります。これは,メソッドを作る作業の未知の部分に多くの柔軟性をもたせるものです。

高圧ミキシング・システムでは,溶媒は通常2種類に限定されています。しかし,中にはポンプに溶媒選択バルブがついているシステムもあります。これは,分析の最中に1つの溶媒から別の溶媒へと切り換えができるものですから,Aポンプにbuffer 1か2を,BポンプにMeOHかCANを接続できることになります。この配列によって,高圧ミキシング,低圧ミキシングのどちらでも,ほとんど同様の可能性が得られるようになります。

 

 

 

 

LC-MSでの測定では,キャリア流量に勾配をつけることがが多い2.1×50mmの小さなカラムが通常用いられます。この場合には,滞留量をできるだけ少なくすることが最上です。滞留量というのは,もちろん,溶媒が混合されてからカラムに入るまでの量のことです。高圧ミキシング・システムの滞留量は,1.5~3.0mLの範囲にありますが,低圧ミキサーでは,約1mL多く,2.5~4.0mLになります。

高圧ミキシングとLC-MSにとって良いことは,このミキサーを,滞留量を減少できる他社同等品のミキサーに簡単に交換できることです。例えば,私たちの研究室では従来の高圧ミキサーをマイクロミキサーに交換して,滞留量を2.3mLから0.4mLに減少させました。75ドルの部品としては悪くないですよね! 低圧ミキシング・システムの交換は簡単ではありませんが,LC-MS測定用の少量ミキサーを購入することによって可能になります。

結論としては,どちらのタイプのシステムにも利点と欠点があるということです。幸いにも,その違いは小さいので,どちらのタイプのシステムでも普通は同様の結果が得られます。こういう例えはどうでしょう,車を買うとき,どのブランドを選びますか? 選択の幅は広いですが,ほとんどの自動車メーカーには,同じような燃費と居住性を持つ車があるのと似たようなことなのだというのは…。

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