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温度と保持

温度と保持

これまでに、カラム温度として"室温"と明記されているHPLC分析法を見たことがありますか?このような記述は、その分析法において、潜在的な問題が今後起こり得る可能性のあることを示す、一つの良いサインであると言えます。今回は、"室温"の解釈について少しだけ振り返りますが、最初に、分離に対する温度の影響について見てみましょう。

温度と保持

私たちの多くは、カラム温度が上昇すれば、保持時間が減少するということを経験的に知っています。この現象が、十分な温度制御が行われていない研究室内において、室温でHPLC分離を行う際に、私たちを少し残念な気持ちにさせる原因です。私は以前に、電気料金がとても高い研究室で仕事をしており、夏場の夜間は空調を稼動させていなかったため、夜間の研究室温度が、日中よりも数度くらい高かったことがありました。その他にも、研究室が南向きのレンガ造りの建物内にあり、更に大きな窓が南側にあったこともありました。その研究室は、夏場でも私が仕事を始める朝の時間帯は、いたって快適なのですが、午後の半ばには、空調で室温の上昇を抑えることができず、とても暑い思いをさせられました。

逆相HPLC分離における、カラム温度の影響を図1に示します。カラム温度が25℃から35℃、更に45℃へと上昇するにつれて、保持時間がより短くなっていくことがわかります。この変化はとても規則的であり、温度が1℃上昇すると、それにより保持が1-2%減少すると一般的に言われています。私は日常的に2%/℃という数値を使っています。このことは、図1からも確認することができます。25℃から45℃の温度差は20℃です。2%/℃では、保持は20 x 2 = 40%減少し、25℃における約20分の測定時間は、45℃では約8分減少することを意味しています。図1の最後のピークは45℃ではおおよそ12分であり、これは20 - 8分ですから、予想通りです。

でも、ちょっと待って下さい!

温度が変化した時に変化するのは、保持だけではありません。温度の変化により、ピーク間隔も変化するのが一般的です。図1の最初の3つのピークについて見てみましょう。25℃においてピーク1と2は、どうにか分離されていますが、35℃では、これらの分離は良くなっており、そして45℃ではピーク2と3が同時に溶出しています。温度の上昇に伴って、ピーク2は、ピーク1および3よりも相対的に保持時間が長くなっています。これは良いニュースでもあり、悪いニュースでもあります。良いニュースは、もし測定が35℃で行われたならば、分離が良いということです。悪いニュースは、温度を35℃以下あるいは以上にしてしまうと、最初の3つのピークの分離に関して妥協が必要であるということです。つまり、カラムの温度を制御することが重要なのです。

その他の効果

通常、良い影響であると考えられる保持時間の短縮だけでなく、温度の上昇が他の良い影響をもたらす場合があります。温度の上昇につれて移動相の粘度が減少し、その結果、圧力が減少します。この低い移動相粘度はまた、クロマトグラフィーシステム内の拡散を改善するため、より細いピークが得られます。これと同時に、保持時間が短くなることにより、より細いピークが得られる効果もあります。細いピークが得られると言うことは、カラムへの試料負荷量が同じであれば、高さが高いピークが得られることを意味しており、これにより、検出限界が改善されます。そして、仮に、元々使用していた圧力での分析に特に問題が無かったのであれば、その圧力に達するまでアイソクラティック分離の移動相流速を上げることにより、分析時間を更に短縮することが可能です。つまり、多くの場合において、もし分離に不利な選択性の変化が起こらなければ、カラム温度を上げることには多くの利点があります。

では、室温とは?

 話を室温の概念に戻しましょう。数週間前、私はオーストラリアのシドニーで上級コースの授業をしていました。そこで私は、室温とは何度くらいだと思うか、受講生に尋ねました。南極大陸からそう遠くないタスマニア南海岸近辺から来ていたある受講生は、室温はおおよそ17℃くらいだろうと答えした。北海岸のダーウィンから来ていた他の受講生は、およそ30℃くらいだろうと答えました。この両者の研究室において、室温条件で行われている各々分析法を、互いに移行するために行う努力をイメージできますか?カラム温度に13℃もの違いがあると、25%の保持時間の違いが生じます。もし、システム適合性チェックの要件として、ある一定の保持時間帯にピークが溶出することが必要な場合、上記の保持時間の違いは、重要な問題となってくるでしょう。

結局どうすれば?カラムオーブンを使えば良いのです。

 

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