セパレーション・サイエンスへようこそ

PEEKチューブ ─ その長所と欠点

PEEK(ポリ・エーテル・エーテル・ケトン)チューブは,多くのHPLCシステムの運用において標準的なアイテムになってきました。便利で廉価,そして内径が簡単に確認できるからです。けれども,このPEEKチューブに付きものの問題を回避するためには,注意が必要です。

PEEKのもう一つの利点は,かみそり状の刃のついた小さなギロチン・カッターでどのような長さにでも簡単に切断できることです。でも,鋏を使う場合のようにチューブに食い込むような切り方はしないで下さい。これもチューブ内部を塞ぐことにつながります。それよりは,カッターをつまんでチューブの周りを回転させるようにしてください。そうすれば,チューブは切断箇所でポキリと折れて,内部がつぶれることはありません。SSチューブの場合も同じですが,溶媒を数mLほどチューブに流して,切断によって残された粒子状物質を洗い流すとよいでしょう。チューブの上端をHPLCシステムに接続して,ポンプを数分間くらい動かすだけです。 

私がPEEKチューブを好むのは,それが簡単に確認できるということにあります。ほとんどのメーカーは,チューブを色分けしています(図1参照)。図の銘柄では,内径0.005インチ(0.125ミリ)は赤,0.007インチ(0.175ミリ)は黄色です。初めてこれを見たときは,色が滲み出ることで検出器に使用している紫外線の誤差の原因とならないか心配になりました。しかし,私たちのラボでは広範囲のテストを行ない,析出した色素が問題となるような証拠は何も見つかりませんでした。

しかしながら,HPLCのすべての溶媒がPEEKチューブに適合するわけではありません。アセトニトリル(ACN),メタノール(MeOH),その他のアルコールなど,水性のバッファーと塩は大丈夫です。しかし,テトラハイドロフラン(THF)と塩素系溶媒はお勧めできません。これらの溶媒はチューブを弱くして,チューブがもろくなる原因になります。これらの溶媒を使用した時も紫外線妨害の証拠を見つけることはありませんでしたが,LC-MSを使用しているなら,注意すべきです。LC-MSアプリケーションにPEEKチューブを用いている時にTHFを使用した場合に,バックグラウンドの問題が生じたのを見たことがあります。そして,これは他の検出器においても問題となる可能性があります。一番良いやり方は,PEEKチューブが使われている場合には,THFと塩素系溶媒の使用を避けることです。

私がちょっと戸惑ったのは,PEEKチューブの取扱説明書にはTHFと塩素系溶媒の使用に対して警告がなされているのに,PEEK注入器ローターや他のPEEK部品には同じような警告がないことでした。そこでPEEK化学の専門家に聞いてみたところ,PEEKと溶媒の適合問題は,処理技術の結果であることがわかりました。チューブは押出し成形で製造されるので,何らかの潤滑剤がその工程で必要となるのです。潤滑剤としては,HPLCシステムを汚染してしまう可塑剤ではなく,少量のPEEKモノマーをポリマーブレンドに混入します。このモノマーが,チューブから抽出されて,もろさと破裂強度低下の原因となるのです。PEEK注入器ローターとその他の機械加工や鋳造PEEK部品は,潤滑剤を必要とせず,したがってモノマーが加えられることがないため,溶媒に対してより安定した製品となるのです。

破裂強度について述べると,ほとんどのPEEKチューブは標準的なHPLC装置の圧力上限(6000 psi = 400 bar)まで使用することができますが,より高圧のU-HPLC型のアプリケーションには使用できません。内径がより小さい場合は,壁の厚みが大きいため,破裂強度はより高くなければなりません。しかし,PEEKチューブを>4000 psi (275 bar)で日常的に運用することを期待するなら,そのチューブの仕様書をチェックするのが賢明でしょう。

PEEKチューブのもう一つの良い特性は,それがPEEKのフィッテイングに手で締め付けて接続できることです。つまり工具を使わずに簡単に接続できるということです。この接続は,SSチューブのSSのフィッテイングよりは堅牢ではないため,適切な組み立て(工程)は欠かせません。ポンプを停止し,チューブをフィッテイングポートの最下部に押し込んで,それからナットを締めます。フィッテイングが漏れるようなら,ポンプを停止し,ナットを緩め,チューブを再度設置してナットを締めます。ポンプが稼動状態のままナットを締めることは,接続部のずれを引き起こして,内部空隙や(液)漏れを生じさせます。また,PEEKフィッテイングとSSチューブを一緒に使用することはできますが,逆は試さないでください。SSフェルールがPEEKチューブを挟みつぶして閉じてしまうこともあり,あるいは締め付けすぎると,チューブの先端を遮断してしまう可能性があるからです。

上述したようにPEEKチューブには多くの良い特徴があるため,私は標準的な圧力の逆相HPLCアプリケーションの多くにこれを使うことに賛成です。ポンプとオートサンプラー間など,接続を行ったらそれについて二度と心配したくないような箇所には,SSチューブとフィッテイングの使用が良いと思います。しかしながら,オートサンプラーとカラム,カラムと検出器の間など,接続が定期的に変更されるような場合にはいつでも,PEEKが私の第一選択になります。もしまだPEEKを試してみたことがないのなら,是非使ってみてください。

PEEKチューブ ─ その長所と欠点

 

>> より多くのソリューション関連記事は、こちらをクリック

 

 

エキスパートのための、無料学習!

無料のウェビナー、オンライントレーニング、トラブルシューティング、アプリケーション、テクニカル情報、そしてブログを受け取り、更に学びませんか。下記にEmailアドレスを記入し、サインアップしてください。

今すぐ無料で登録  

 

セパレーション・サイエンスへようこそ

セパレーション・サイエンスは、クロマトグラフィー及び質量分析技術に携わる皆様のための基礎、実践そしてトラブルシューティングに関する情報をお届けする、業界最前線のポータルサイトです。さまざまな記事・アプリケーションを特集し、併せてウェビナー、ワークショップ、そしてカンファレンスを開催することで、"すぐに使える"情報を発信しています。

ブログ更新に登録