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IPカラムの洗浄

Q:カラムからイオン対試薬を洗い流すのは難しいと思います。最良の方法を教えてください。

JWD:HPLCカラムの処理を検討するときには,新人医師に与えられるヒポクラテスの誓いの「有害と知る方法を決してとらない」という言葉をよく考えなくてはなりません。逆相とイオン対クロマトグラフィーに用いられるシリカ塩基カラムの多くはかなり耐久性があるとしても,回避すべきいくつかの事項があります。そのひとつは,カラム内に移動相の成分が沈殿することです。ご存知のようにイオン対HPLCは,イオン対試薬を移動相の添加剤として用います。これは,システムが混合モード分離(一部は逆相,他はイオン交換)として機能するようにするためです。スルホン酸などイオン対試薬の多くは,有機溶媒に溶けやすいものではありません。特にアセトニトリル(ACN)の場合はそれが如実で,これがイオン対メソッドの溶媒としては,しばしばメタノール(MeOH)が選ばれる一つの理由です。

 

したがって,イオン対試薬が入っているカラムを洗浄するための条件を選択する時は注意が必要になります。もし移動相が100% ACNに直接交換されているなら,時にはそれが100% MeOHにであっても,バッファーの沈殿のリスクは現実的です。最も安全な方法は,まず移動相(A溶媒)の水性部分を水に置き換えることです。例えば,もしA溶媒がスルホン酸塩50 mMヘキサンでBがMeOHであったなら,これらを水とMeOHに交換します。カラム容量の5~10倍(例えば10-20 mL)位を,同じA/B比率で流してイオン対試薬のほとんどを取り除いたら,次は通常のカラム洗浄手順に変更します。[この同じ手順は,例えば,リン酸塩(A)とACN(B)など,B溶媒に溶解度の低いバッファーが使用されたときにはいつでも使うことができます。それによってHPLCシステムやカラムに沈殿が起るリスクを低くするのです]。

 

残っている作業はカラムからイオン対試薬を除去することです。最初に,イオン対試薬を100%除去することはできないであろうことをご承知ください。この理由からも,イオン対試薬が入っているカラムは非イオン対アプリケーションには極力使用しないことをお勧めします。ほとんど新品のカラムで逆相メソッドを実行して,それが誰かのメソッドで残された5 ppmのイオン対試薬がそのカラムに入っていたために,新しいカラムで再生できないことが分かっただけだった時のフラストレーションを想像できますか?

 

大抵の場合,カラム容量の10-20倍(15-30 mL)のMeOHかACNで洗い流すという通常のカラム洗浄手順で,イオン対試薬をほとんどの目的に適うぐらいには除去することができます。もう少し積極的な手順を用いたいのなら,50/50 MeOHと100-200mMのリン酸塩(pH 6)の混合液で洗浄してください。有機溶媒だけで洗浄するより,高濃度の塩と中間値のpHの方がイオン対の除去には効果的に見えます。でも,気を付けてください! この溶液は飽和にはほど遠いものなので,手で混ぜてシステムに流し込むことをお勧めします。システムはあらかじめ50/50 MeOH/waterか低濃度のバッファーで洗い流しておいてください。そして,有機溶媒の濃度を高める前に,50/50 MeOH/waterで続けて同じように洗浄して,余分な塩を取り除いてください。

 

イオン対状態はとてもゆっくりと平衡状態に達するため,カラム内に新鮮な移動相を流して洗浄するにはカラム容量の20-50倍が必要かもしれません。一定の保持時間が得られるようになるまで標準試料を繰り返し注入して平衡をチェックすることが最善です。このゆっくりとした平衡によって,毎日のようにシステム洗浄を繰り返すことを止める作業者もいるでしょう。別の方法としては,ポンプの流量を最低に(例えば0.1 mL/min)にセットすることです。イオン対試薬がカラム内にある間は,ポンプを長時間停止しない方が良いでしょう。なぜなら,放置されたシステムにおいては,移動相が沈殿したり蒸発したりするリスクがあるからです。作業者の中には,カラムをシステムから取り外して,カラム内にイオン対試薬を入れた状態で保管することを選ぶ人もいます。これは私の好むメソッドではありませんが,もしそうするなら,カラムのキャップをきつく締めて移動相の蒸発を防いでください。カラム内の溶媒の蒸発やバッファーの沈殿につながるその他のプロセスは,カラムに対する死の宣告です。カラムの細孔から沈殿したバッファーを取り除く方法はありません。沈殿した塩の効果的な溶解には,細孔内にごく少量の移動相を循環させることぐらいです。

 

ここでの結論は,カラムからイオン対試薬を洗い流すのは,他の逆相アプリケーションにおけるカラム洗浄とそれほどの違いはないということです。ただ,カラムやシステムにイオン対試薬を沈殿させないよう,特に気を付けてください。それから,「一度イオン対カラムとして使用したら,常にイオン対カラムにすること」を覚えておいてください。

 

イオン対洗浄手順

 

1.    移動相の水性部分を水に置き換える。

 

2.    カラム容量の5-10倍(10-15 mL)の水/有機溶媒で洗い流す。

 

3.    カラム容量の10-20倍(15-30 mL)の有機溶媒で洗い流す。

 

4.    100%有機溶媒で満たす。

 

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