Q:HPLC充填材の細孔と粒子の大きさの関係はどのようなものですか?
JWD:HPLC充填材の属性であるこれら二つには関連がないというのが簡潔な答えです。逆相HPLCカラムの多くは,シリカ粒子が結合した固定相を基礎としています。これらの粒子が充填材の基盤となっているのです。最も一般的な粒子の直径は,5-,3.5-,そして3-µmです。カラムそのものの効率向上と流量に対するカラム効率の相対的な独立性によって,直径が3-µmより小さい粒子がだんだんと一般的になってきています。
HPLC粒子の細孔の大きさは製品によってかなり違いますが,カラムの特定の製品ラインの中では一貫していなければなりません。細孔のサイズには普通2つのカテゴリーがあります。小さな細孔の粒子は,細孔の大きさがおよそ6-15 nm (60-150 Å)で,大多数は8-12-nmの範囲のものです。これらの粒子がベースとなる充填材は普通,試料の分子量が<≈1000 Daの“小分子”の分離に用いられます。大きな細孔の粒子には≥ 30 nm (300 Å)の細孔があり,どちらかといえばプロテインなど巨大分子の分離に用いられます。HPLC充填材を,固体球の表面に結合相がついたテニスボールのように描くのは簡単ですが,これは下手な表現です。シリカは,そのほとんどの表面積が粒子の内部にあり,硬いスポンジのように描いた方がよいのです。このような粒子の表面積は細孔の大きさに反比例しますから,大きな細孔のカラムは小さな細孔のものと比べて,より小さな表面(積)になります。
想像がつくと思いますが,シリカ粒子の合成に関する化学と技術は,シリカメーカーの厳重な社内秘となっています。シリカメーカーは十数社ぐらいしかありませんが,シリカ粒子に結合相を足してカラムに充填する企業はたくさんあります。シリカの製造方法は何通りかありますが,ほとんどの場合,テトラエトキシシランや同じような出発原料から作られた合成シリカポリマーから始めます。ゾル-ゲル法という技術では,シリカ乳剤が球状のビーズに加工され,乾燥させてシリカ粒子になります。細孔の大きさと粒子の大きさはpH,温度,粒子の準備段階で用いられたシリカゾルの濃度によって制御されるのです。
シリカ粒子を作る別の方法としては,(まず)微小粒子を作り,それを結合してより大きな粒子にするというやりかたがあります(図1参照)。微小粒子と微小粒子の間の空間が細孔となるので,少し大きめの微小粒子はより大きい細孔を形作り,逆もまた同様です。
経験から言って,細孔に出入りしやすくするためには,細孔の大きさは,分子の流体力学的直径の少なくとも3倍でなくてはなりません。流体力学的直径の概念は図2に示してあります。1つは圧縮型でもう1つは棒状という,同じ分子量の分子2つが図示されています。流体力学的直径とは,分子があらゆる方向に回転して球状の容積を生じた場合の容積の直径のことです。小分子(
メーカーによって,細孔のサイズはかなり一貫しています。例えば,A社ではある製品ラインには細孔のサイズが8 nmの粒子があり,別の製品ラインには12 nmのものがあります。それに対してB社は,すべての製品に細孔のサイズが10 nmの粒子を使っているといった具合です。小さい細孔の製品を選ぶ際に,細孔のサイズが問題となることはめったにありません。
粒子の表面積は細孔の直径に反比例するので,粒子のサイズが5-µm,細孔が10-nmのカラムは,(粒子のサイズが) 5-µm,(細孔が) 30-nmのカラムの約3倍の表面積をもつことになります。保持時間は表面積と直接関連するため,小さな細孔のカラムが使用できるときには大きな細孔のカラムの使用は望ましくありません。しかしながら,高濃度の有機溶媒を用いてもアプリケーションの保持時間があまりに長い場合は,大きな細孔のカラムに変えてみるのも保持時間を短くする一つの方法でしょう。
要約すれば,カラムの細孔のサイズというのは,(それによって)試料の分子が細孔に出入りしやすくなるように選択されるものです。検体が十分小さくて簡単に細孔に入れるのであれば,表面積が大きいため小さな細孔のカラムが求められるのです。カラムの性能,あるいは段数を制御するのは粒子の大きさです。細孔の大きさは表面積を制御します。保持時間は,まず表面積によって,結合相の化学構造,移動相の化学構造,そしてカラムの温度によって制御されます。
図1:微小粒子より大きな粒子となる擬集
図2:形の違う同じ分子量の分子の流体力学的半径の比較
流体力学的直径
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