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固定相のデウェッティング(脱濡れ)とは?

HPLCにおける固定相のデウェッティング(Phase dewetting)は,固定相の崩壊 ( phase collapse)と呼んでいたものと同じプロセスです。固定相のC18グループでは表面にケバがあるテニスボールのように描かれることが多いのですが,C 18カラム装填に用いられる微粒子は,固いスポンジに似て全体的に多孔質です。

 

固定相のデウェッティング(脱濡れ)とは?-1

固定相のデウェッティング(脱濡れ)とは?-2

 

こうした微粒子のほとんどすべての表面部分は,細孔の内部にあります。小さい分子の分離(例えば<1000 Da:ダルトン)によく用いられる微粒子には,8~12 nmの範囲内の細孔があります。C8やC18などの固定相はこれらの微粒子の表面に付着されますが,ほとんど全部の表面部分が細孔の内部にあるため,試料の分子が保持されるためには細孔内部に拡散しなければなりません。

 

図1は,細孔の一部をわかりやすいように戯画化したものです。細孔も微粒子の外側も,疎水性のC18結合相で覆われています。標準的な操作では,細孔は移動相(ほとんどのアプリケーションでは水性のバッファーとアセトニトリルかメタノールの混合)で満たされています。図1のピンクで示した部分です。カラムをきれいにするためには,カラムからこの移動相を,カラムに付着しているかもしれない試料の残渣と共に洗い流したいと考えますよね。

 

試料と移動相は水性ですから,カラムを水で洗い流すことが,カラムをきれいにする最も効果的な方法だと思われるかもしれません。しかしながら,細孔に水が入ると,図2で示したような状況に陥ります。水(図2では茶色で示しています)は細孔内に拡散して移動相に取って代わりますが,固定相は全く無極性であるため,水は結合相のチェーンの間に浸透できません(図2の青で示した残りの部分)。バッファーの大部分を含む移動相の除去という第一段階は,この作業で達成されますが,固定相それ自体を洗い流すことはできないのです。

 

この時点でポンプが止められたり圧力低下が起こったりすれば,細孔は疎水性であるため,細孔内の水は強制的に外に出されます(図3参照)。この時点の状態を,細孔はデウェットされたというのです。さらに水で洗い流すことには何の利点もありません。なぜなら,水は細孔に浸透しないからです。十分な有機溶媒(例えば,>5%のアセトニトリルかメタノール)を含む移動相で洗浄することで,細孔は再ウェット化することができます。

 

「水で洗浄することの意味は何ですか」という質問が出るでしょう。「利点は何もない」というのが簡潔な答えです。唯一の注意点は,移動相に高濃度のバッファー(とりわけリン酸塩>20 mモルのような)がある場合です。この場合,カラムにバッファーが沈殿する危険性がありますから,移動相を100%の有機溶媒で直接洗い流すようなことはしたくないでしょう。これを避けるためには,少量の水(10 mL程度)による洗浄か,移動相のバッファー部分を水に交換することができます。例えば,まず60%ACNと40%バッファーの混合液で,次に10 mLの60%ACNと40%の水の混合液で洗い流し,それから100%ACNに変えてカラムを洗浄します。もし三種溶媒システムがあるならば,Aのリザーバーにバッファーをいれて,BにはACN,Cには水を入れることができます。移動相は,A/Bになり,B/Cに変わり,そして100%Bとなって洗浄が行われます。これは,試料のバッチ処理の最後に,プログラムされた洗浄順序で自動的に行うことができます。

 

カラムのデウェッティングを回避するためには,C8やC18カラムには≈5%より低濃度の有機(溶媒)の使用を避けるか,100%水性の移動相が用いられるように設計されたカラムを使用しましょう。このようなカラムは普通,AQ(高極性),エンドキャップ極性,組み込み極性相,あるいは100%の水がOKだというラベルがついています。

固定相のデウェッティング(脱濡れ)とは?-3

 

 

図1:HPLC微粒子内の正常にウェットにされた細孔の図解

 

 

図2:水による洗浄の効果

 

 

図3:デウェットされた細孔

    

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