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空気によってカラムは破損しますか?

作成者: Separation Science Japan|17/12/19 1:00

Q:HPLCシステムの夜通しの作業の際に,たまたま溶媒を切らしてしまいました。ポンプの低圧力限界設定を起動しておかなかったため,ポンプは夜中まで空気を送り込んだのです。これによってカラムはだめになってしまいますか? もし大丈夫なら,どうやったら空気を全部排出できるのでしょうか。

 まず第一に,あなたの想定には間違いがあります。もしリザーバーが空になったら,確かにポンプに空気を引きこむことになりますが,ポンプはシステムに空気を注入したりはしません。HPLCポンプは,空気ではなく液体を注入するように設計されているのです。空気で満たされるとポンプは呼び水を失って,注入作業を停止します。確かに,ポンプが完全に停止する前に,若干の気泡がカラムに送り込まれてしまうことはありますが,ポンプが一晩中カラムに空気を注入するということはありません。そして,もしそれが起きたとしても,問題を引き起こすことはないのです。 

この問題を是正するには,まず全部のラインから空気を取り除いて,ポンプが稼動するよう呼び水の再注入をしなければなりません。始める前にカラムは外しておきましょう。溶媒から完全にガスを抜くことから始めます。イン・ラインのデガッサーを使うのならそれで十分ですが,そうでない場合は,ヘリウム散布をお勧めします。それからポンプの排出口にあるパージ・バルブを開けて,標準的な方法でポンプに呼び水を入れます。ポンプによっては,これは注射器を補助に用いて,リザーバーとポンプの間にある管類に満たすということです。次に,ポンプを大流量(例えば,10 mL/分)で数分間動かして,ポンプと連結している管類から空気をすべて除去します。次いで流量を1 mL/分ぐらいに落としてパージ・バルブを閉め,気泡が出てこなくなるまで管類からカラムの注入口までをきれいにします。ポンプを止める前に,100%のメタノール(MeOH)か,アセトニトリル(ACN)に切り替えます。これらの溶媒は粘着性が低いので,カラムから気泡を除去するのに役立つからです。

 

次のステップは,カラムから空気を除去することです。カラムを注入口に再接続しますが,このときカラムを検出器には接続しないでください。作業の過程を視認したい場合は,カラムの排出口に接続管を取り付けて,その先端をビーカーか廃棄物入れの底に置いてください。ポンプを稼動させて,流量を圧力の3000-4000 psi (200-275 bar)まで増やします(圧力増加によって気泡が溶液に圧搾されるため,除去しやすくなるのです)。ポンプを10分程度,あるいはカラムの最先端の廃棄ラインから気泡が全く出てこなくなるまで稼動させます。ポンプを停止し,検出器を再接続して,これで仕事に戻ることができるはずです。気泡がいくつか検出器に出ることがありますが,これは1~2分で消えるはずです。

私が説明したのは,逆相カラムから空気を取り除く手順です。もし,別のクロマトグラフ・モードを用いているなら,他の溶媒が適切かもしれません。シリカ塩基カラムを用いていないなら,カラム圧力の推奨限度を超えないように注意してください。うっかりして末端プラグを外したままカラムを保管して,カラムの先端部に少し空気が入ってしまった場合にも,この同じカラム浄化手順に従ってください。 

ポンプを空のまま長時間稼動させることが与える副次的な悪影響としては,ポンプ・シールの損傷があります。ピストンが前後に動き,ピストンとポンプ・シールの間の滑剤として作動するのが移動相です。この潤滑剤がなければ,ポンプ・シールは破損することがあります。上述したカラム浄化手順の実施中に,チェック・バルブの下部と背後部の排出孔から漏れがないかチェックしてください。漏出はポンプ・シール損傷の兆候です。漏れが見つからなければ,ポンプを標準稼動状態に戻して,圧力をチェックします。圧力が安定していて正常であれば,ポンプは大丈夫です。特に2ポンプシステムの場合の1つのポンプの先端の圧力が波打つようなら,シールが破損しているかもしれません。ポンプ・シール破損の兆候が何か見つかった場合は,シールを交換しなくてはなりません。安全策として,あるいはポンプ・シールの交換時期が近づいているような場合には,システムの浄化の前にシールを交換してしまう,という方法もあります。これなら,シールについての心配は無用になりますから。

図1:ポンプ・シールの損傷は,ポンプを空のまま長時間稼動したことの副作用のひとつです。ポンプ・シールの磨耗の兆候がある場合は,シールを交換してください。

 

 

 

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