基本に戻りましょう#1:保持係数
これから数回に渡って、HPLCの初級コースを訪れましょう。分離の評価、方法開発や問題原因調査に関係する実用性に重点を置いた、HPLCで使われている様々な基本的な計算について見てみましょう。初回は、保持係数k (またはk' )です。保持係数は、移動相‐固定相間における、試料の分布の尺度であり、二種類の液体間への溶質の分配係数と類似しています。図1に示す様に、その計算はシンプルです。tR は保持時間であり、t0 は非保持物質のカラム通過時間です。保持時間は、試料が注入された時点から、ピークの頂点までの時間により、測定されます。非保持物質のカラム通過時間は、最初に現れるクロマトグラムの乱れ("溶媒先端")により、簡単測定することが可能です。t0 については、次号でより詳細に紹介します。tR とt0 は同じ単位(分、秒など)です。従って、k は無次元の数です。
k の計算は単純ですが、値を求めるには計算機が必要であり、この"活性化エネルギー障壁"は我々の多くにとって、あまりにも高く(電卓を探す手間など)、従って、わざわざ計算しません。しかし、多くの場合において、我々はk の値を正確に知る必要が無く、これは推定でも十分だということを意味しています。
保持係数は下記により、簡単に見積もることができます。k を求める式の分子である(tR -t0 )は、保持時間tR からt0 を引いているということに注目して下さい。あるいは、t0 より前の部分を全て無視して、t0 の位置から測定を始めて下さい。分母のt0 は、時間や距離の代わりに、t0 を測定の単位に使うことを意味しています。つまり、t0 の位置からスタートして、図1の下部に示す様に、t0 を単位としてベースラインに目盛りを付けるのです。こうすることにより、k が約1、約2および約3の三つのピークを確認できます。
今後のHPLC Solutionsで紹介しますが、k が2から10の間であれば、ベストなクロマトグラムが得られ、通常、アイソクラティック分離では、k が1から20までの範囲が許容範囲です。もし保持の範囲がこれよりも広い場合は、グラジエント分離を考えた方が良いでしょう。もしk が1以下の場合は、より多くの問題、具体的には、不安定な分離、あるいは分離開始直後にクロマトグラムが妨害されるなどの、問題が起こる場合があります。
図1. 保持係数は標準的な式からでも計算可能であるが、t0 を定規として使用することによって見積もることも可能。
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