基本に戻りましょう第 2 回 : t0
前号では、保持係数kについて、どのように計算するのか、あるいは、どのように見積もるのかについて紹介しました。どちらのやり方で算出するにしても、カラムのデッドタイムt0 を知る必要があります。UV検出器を用いて実サンプルを測定する際、多くの場合、図1に示す様な、明らかなベースラインの乱れが生じます。もし、試料が非常にきれいであれば、図1(a)の様に、わずかなベースラインのジグザグとしてt0 が現れますが、多くの場合、図1(b)に見られる様に、クロマトグラムの最初に、明確な"溶媒"あるいは"不純物"のピークが現れます。今ここでは、正しくt0 を求めることが重要ですから、t0 を一定の位置で測定しましょう。図1(a)と1(b)の矢印は、私がt0 を測定するために選んだ場所を指していますが、これらの点は、ベースラインが上がり始めてピークが始まる地点です。この方法であれば、いつも一定の測定を行うことが簡単です。
簡便性に欠けますが、t0 を測定する方法は他にもあります。カラムに保持されないことが既知の物質を注入する方法です。この方法はカラムメーカーが行っている方法です。ウラシルは最も一般的なt0 マーカーです。なぜなら、ウラシルは大きなUV応答を有しており、また、一般的に使われているほとんどのカラムテスト条件である、メタノールが60%以上の割合で含まれている、メタノール/水移動相では、保持されないためです。チオ尿素は、特に弱い(有機溶媒含有量が少ない)移動相が要求される時には、良いt0 マーカーです。
しかし、もし測定開始後にベースラインの乱れが見られない時は、何が起こっているのでしょう?これは、例えば、検出器に質量分析計を使っている時に起こり得ます。前号で述べた様に、t0 測定における我々の要求に対しては、概算でも十分であり、次の二つの方法のどちらかでt0 を求めることができます。最も一般的なカラム内径である、内径4.6mmのカラムを使用している場合は、t0 の概算はとてもシンプルです。カラム体積VMは、cm単位で表示したカラム長さに0.1を掛けることにより、概算することができます。すなわち、150x4.6mm内径のカラムは、長さ15cmですから、VMは0.1x15となり、約1.5mLです。この値の実際のカラム体積からの誤差は、約10%以内であると思います。カラム体積をデッドタイムに変換するには、流速(F)で割るだけです。つまり、今の例だと、流速を2mL/minとすると、t0 は(1.5mL)/(2mL/min)であり、約0.75minです。
ここまでは、上手く計算できましたが、内径が4.6mm以外のカラムを使用する際には、どのようにしますか?そのような時は、図1の下部に示す式を使用することが可能です。式中の指数は計算機の使用が必要であることを意味しており、あなたはこの面倒な計算をしたくないと思うでしょう。しかし、待って下さい!4.6mm内径のカラムの次に一般的なカラムは内径2.1mmであり、このカラムの計算はシンプルです。カラム体積はカラム断面積の変化と直接関係しており、カラム径の比の2乗に比例しています。つまり、最も一般的な二つのカラムについて考える場合、その係数は(4.6/2.1)2=4.8であり、約5です。私は5と10が気に入っています。簡単に暗算ができるからです。最も一般的なLC-MSカラムである50x2.1mm内径のカラムについて考えて下さい。もしこのカラム内径が4.6mmであれば、前述の概算に従って、体積は5cmx0.1すなわち、約0.5mLです。2.1mm内径のカラムは4.6mm内径のカラムより直径が小さいので、上記の換算係数5で割ることにより、VMは約0.1mLつまり約100µLと計算できます。全て暗算できます。どうですか、簡単ではありませんか?
図1. カラムデッドタイムを概算する種々の方法。
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