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バッファーの寿命

作成者: Separation Science Japan|19/01/30 7:25

上記の緩衝液とは対照的に、LC-MSや蒸発光散乱検出器(ELSD)あるいはコロナ荷電荷粒子検出器(CAD)の様な、蒸発を伴う検出器に使用する緩衝液は比較的安定性が低いでしょう。特に、炭酸塩やアンモニウム塩が存在する場合は安定性が低いです。これらの成分は揮発性が高いため、24時間の間に大部分が揮発します。この理由により、これらの緩衝液は毎日調製することをお勧めします。

バッファーの寿命

最近数回にわたって紹介してきた、緩衝液の使用に関する種々の側面(HPLC Solutionsの12、13、14および20号など)を読んで下さった読者の一人(D.B.さん)から、調製した緩衝液がどれくらいの期間使用することができるのか、という質問を頂きました。緩衝液の寿命に関しては、二つの見方があります。一つは、それが緩衝液としてどれくらいの期間、有効であるのか。二つ目は、緩衝液の他の性質との関係、特に、緩衝溶液内での微生物の増殖です。

UV検出を備えたHPLCで最も一般的に使われている緩衝液は、リン酸緩衝液と酢酸緩衝液です。HPLC Solutionsの14号で紹介したように、酢酸塩とリン酸塩を組み合わせて調製した緩衝溶液を用いると、緩衝液のpHは、ほとんどの逆相カラムで推奨されているpH2-8の範囲において、どこでも効果的に作用するように調節することが可能です。リン酸塩と酢酸塩どちらか一つ、あるいは、組み合わせた場合でも、下記の理由により、10mMあるいはそれ以上の濃度で使用した方が、長い間pHが安定します。

緩衝容量やバッファーpHが分離に大きく影響している時、これらの性質のどちらかに基づく緩衝液の劣化が原因で、HPLCシステムにダメージを与えることは滅多にありません。それらのクロマトグラフィーにおける性質に加えて、ほとんどの緩衝液は、HPLCで用いられる濃度では、微生物の増殖に適した環境を提供します。もし、緩衝液を室温で長い時間放置していれば、その中で繁殖した微生物によって濁ってくるでしょう。このような汚染はフリットを詰まらせ、チェックバルブを覆い、クロマトグラフィーに悪い影響を与えます。図1に示す様な極端に大きな粒子状物質が存在すると、これらは、システムから接続チューブを通って流れ、フィルター上に溜ります。ここで、大きな問題なのは、微生物による汚染を心配することなく、緩衝液を使用することができるのは、どれくらいの期間なのか?ということです。他の多くの質問と同様に、この答えも、場合によって変わってきます。

 

 

私の経験では、多くの研究室では、緩衝液の使用期限を一週間から二週間に設定しています。数年前、我々は実験により、次のことが分かりました。緩衝液容器の蓋を閉めてあると、室温で二週間では微生物による汚染がほとんど起こりませんでした。そこで、私達は緩衝液を保存するための標準作業手順(SOP)を、上記の期間より控えめの一週間おきと決めました。この一週間の期限を決めてから、これまで緩衝液に直接由来する可能性のある問題が起こったことはありません。

一方、私のパートナーであるTom Jupille氏はシングルカラムのイオンクロマトグラフィー用カラムと装置を製造している会社に勤めています。彼らの場合、24時間で分析に影響するような微生物の増殖が起こります。ですから、彼らは緩衝液を毎日調製しています。

最近、UHPLCシステムに変更しているクロマトグラファーは増加していますので、緩衝液に関する更なる注意が必要となってきています。一般的なHPLCシステムは、2µmの孔径を持つフリットを備えた5µmの粒子カラムが使われています。3µmの粒子径のカラムでは、多くの場合0.5µmの孔径のフリットが使われており、また、多くの場合、0.5µmの孔径のインラインフィルターも使用されています。これらのフリットの多くは、少量のコンタミネーションには耐えることができます。しかし、UHPLCシステムにおいては、0.2µmのフリットが、2µm以下の粒子を充填しているカラム、あるいはシステム内のその他の場所において使用されています。このフリットは、溶液中のバクテリアを取り除くためのフリットと同じ孔径であるため、これらのフリットは緩衝液からバクテリアを取り除くのにとても有効であると同時に、バクテリアによって細孔が詰まってしまうと言うことは、皆さんも容易に想像できるでしょう。このような理由から、私は、UHPLCシステムを使用する場合は、緩衝液を毎日調製することをお勧めします。

次に示す二点について更に注意すれば、緩衝液内での微生物の増殖を防ぐのに十分でしょう。一つは、緩衝液のリザーバー容器に緩衝液を補充することを避けることです。その代わりに、緩衝液がさらに必要になった際には、同じ容器に補充するのではなく、きれいな容器に溶液を入れて、容器ごと交換して下さい。もし、何らかの理由により、緩衝液内で微生物が増殖した場合は、それを送液する前に、システムを滅菌して下さい。そして、緩衝液の容器の入口側ラインのフリットを交換して下さい。さもないと、隣のバッチである移動相に菌を植え付けてしまうでしょう。配管やインラインのデガッサを薄い漂白液で洗浄する必要があるかもしれません(この溶液をカラムに流さないように)。緩衝液へ有機溶媒を十分に添加すれば、微生物の増殖を抑えることができるでしょう。私は、20-30%程度加えると効果があると考えています。また、5%加えれば、微生物の増殖を抑制することができると聞いたこともありますが、いずれの仮説についても、確認実験を行った訳ではありません。更に、有機溶媒の添加は、実用的かもしれませんし、場合によっては実用的ではないかもしれません。例えば、緩衝液に30%のアセトニトリルが入っていれば、5%から100%までのアセトニトリル-緩衝液グラジエントは、極めて困難になるでしょう。

後で後悔するより、先に用心しておくほうが良いですね。緩衝液の保存期間は短くして、定期的にリザーバー容器を洗浄し、もし緩衝液にコンタミネーションがあった場合には、システムの洗浄を行って下さい。

図1. 微生物で著しく汚染されたHPLCシステムから採取された粒子状物質。 Jennefer Birchett氏のご厚意による。

 

 

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