優れたカラム性能
新しいSupelco Ascentis® Expressカラムシリーズは、図1に示すような2.0 μmのFused-Core(コアシェル)シリカ粒子を使用し、UHPLC装置での使用を考えてデザインされている。Ascentis Express 2.0 μm UHPLCカラムでは、直径2 μm未満の粒子が持つ優れたカラム性能という利点を最大限維持しつつ、同時に背圧の問題点を最小化している。図2に、Fused-Core 2.0 μm粒子カラムとFused-Core 2.7 μm粒子カラムの換算段高(h)と線速度のプロットを示す。両者とも、ほとんどの線速度範囲においてhの値が2未満であることが分かる。この値は、粒子径が2 μm未満の全多孔性あるいはコアシェル型の一般的な市販UHPLCカラムよりも顕著に低い値である。
粒子径が一定であれば、より低い換算段高を有するカラムは、より高い分離性能を示す。Ascentis Express 2.0 μm UHPLCカラムは、より小さい径の粒子を使用した他社カラムよりも低いカラム圧で、同等の分離性能が得られる。低いカラム圧で高い分離性能が得られると、カラム寿命を延ばすことができる上に、カラム内で発生する摩擦熱による選択性の変化も抑えられる。Ascentis Express 2.0 μmカラムは、Waters ACQUITY、Agilent Infinity、Thermo ScientificTM、Dionex UltiMateTMおよびVanquishTM、Shimadzu® Nexera、または他の最新のUHPLC装置において使用することにより、その性能を最大限に発揮する。図2で比較した各種カラムについて、そのカラム圧と流速の関係をプロットした結果を、図3に示す。図4は、Ascentis Express(10 cm × 2.1 mm, 2.0 μm)カラムの品質管理(QC:Quality Control)クロマトグラムの一例である。表2にはAscentis Expressと、他の自社ブランドのカラムおよび他社カラムとの比較結果を示している。図5では、単位カラム圧(psi)当たりの理論段数を比較している。カラム圧当たりの段数で比較すると、Supelcoの Ascentis Expressカラムが一般的なC18カラムよりも格段に優れていることが分かる。この比較で、Ascentis Expressカラム以外でAscentis Express C18 2.0 μmカラムよりも良い結果が得られたのは、粒子径分布が狭いSupelco のTitan C18 (1.9 μm)カラムのみである。
優れたカラム選択性
粒子径2.0 μmのカラムとして、Ascentis Express C18とF5(ペンタフルオロフェニルプロピル、PFP)の2種類の固定相を最初に発売した。現在、その他の各種固定相も発売している(最新情報はsigma-aldrich.com/expressにて掲載)。フレキシブルな化学構造を持つアルキル鎖が結合したC18固定相は、溶質がシンプルな分配機構によって保持されているため、極めて万能な固定相である。この時、溶質の固定相への分散相互作用と移動相溶媒への溶解度が、保持と選択性をコントロールする。Ascentis Express F5固定相の相互作用は、C18の場合とは異なっている。溶質は、分散力だけでなく、5つのフッ素置換基によって強い極性を持った芳香環とも相互作用するためである。C18固定相とPFP(F5)固定相とでは、一般的にとても大きな選択性の違いを示すことから、分離分析法の開発において、これらの固定相は相補的に使用することをお薦めする。
細孔径90 ÅのAscentis Express Fused-Coreカラムシリーズは、分離分析法の開発あるいはその移行を容易にするため、異なる粒子径でも同じ保持および選択性を持つようにデザインされている。酸性、塩基性および中性の薬剤成分を含む60成分の溶質のlog k値を、2.0 μmの粒子を導入した新しいAscentis Express C18カラムと既に広く使用されている2.7 μmタイプのカラムで比較した結果を図6に示す。図6は、移動相の有機溶媒成分としてメタノールとアセトニトリルを使用する条件で、pHは4.0と7.0で比較している。4つの条件の全てにおいて100%の相関が得られている。これは、粒子径が2.0 μmでも2.7 μmであっても、C18結合型Fused-Core粒子は異なる化学構造を持った幅広い種類の化合物に対して同じ分離係数(α=k2/k1)を与えるということである。さらに、各プロットの傾きが1であることも重要である。これは粒径が異なる二つのC18カラムの保持係数(k)が同じになることを意味している。これらのカラムにおいて、選択性と保持性能が同一であることは、サルファ薬混合試料をAscentis Express C18の2.0 μmおよび2.7 μmカラムで分離したクロマトグラム(それぞれ図7Aおよび図7Bに示す)でも確認できる。また、市販のコアシェル型C18固定相の1.7 μm粒子径カラムを使用した結果(図7C)と比較することにより、Ascentis Expressカラムは、他のC18カラムとは粒子径等が異なっていても、同様の保持と選択性を有していることが分かる。粒子径2.0 μmのAscentis Express C18カラムは、粒子径が2 μm未満の他社C18コア型カラムに匹敵する性能を、より低いカラム圧で得ることができる。
図8には、同一のステロイド試料をAscentis Express C18 とF5 カラムで分離した時の選択性の違いを示している。ヒドロコルチゾンとプレドニゾロンは分子内の二重結合の数が一つ異なるだけで、これらの溶解度はほとんど同じである。これら化合物の違いは、溶解度ではなく、その分子形状である。C18 カラムでは、アルキル鎖のコンフォメーション変化により、構造の差異が僅かな溶質に同等の相互作用をする傾向にあることから、これらの溶質に対する選択性は良好ではない。剛直な化学構造を持つ異性体に対しては、PFP カラムがより良好な選択性を有していることがある。これは、一方の異性体が平坦な芳香環に対して、より強く相互作用することがあるためです。化学構造がきわめて類似し、かつ剛直な化学構造を有する溶質に対しては、一般的に、PFP のような芳香環を有する固定相の方が、C18 固定相よりも高い選択性を示す。
まとめ